農業日報には何を書く?忙しい日にも残せる記録の例
公開 2026年10月30日
日報の項目は、自分の振り返り用・会社への報告用・制度や取引用で違います。決まりがある記録の在りかを整理し、自分のための記録は「日付・畑・作業」から始める記入例を、立場ごとに並べました。
夕方、片付けを終えて、さて日報。何を書いたらいいのか、手が止まることはありませんか。
日報の項目は、誰のために書くかで変わります。自分があとで振り返るためなのか、会社に作業を報告するためなのか、取引先や制度のために記録を残すのか。すべての人に同じ項目が必要なわけではありません。
会社や取引先、制度で項目や様式が決まっている記録は、その決まりに従ってください。この記事の前半では、そうした決まりがどこにあるかを整理します。後半は、自分のための記録の話です。自分のための記録なら、忙しい日は一行でも残せば、あとで思い出す手がかりになります。書けなかった日があっても、次の日からまた書けば大丈夫です。
先にまとめると
- 日報の項目は、自分用・会社用・制度や取引用で違う
- 決まりがある記録は、その決まりの項目と様式で残す
- 自分用なら、まず「日付・畑・作業」の3つから
1.日報は、誰のために書く?
| 用途 | 項目を決めるのは | 主な中身 |
|---|---|---|
| 自分の振り返り | 自分 | 自由。日付・畑・作業から始めて、気づいたことを足す |
| 会社への報告 | 会社 | 会社の様式による(作業時間や畑の状態など) |
| 制度・認証・取引 | 制度・認証・取引先 | 農薬を使った記録、GAP、特別栽培、交付金の作業日誌、取引先の指定の様式など |
同じ「日報」でも、会社に出すものと、自分のための手帳とでは、求められることが違います。会社や制度の記録は「出せばいい」ではなく、決められた項目がそろっていることが大事です。自分の記録は、続けられることが大事です。
2.決まりがある記録
ここで挙げるのは、代表的なものです。当てはまるかどうかは、自分の作物・出荷先・受けている支援によって変わります。
農薬を使ったとき
農薬を使う人が守る基準を定めた国の省令は、第9条で、農薬を使ったときに次のことを帳簿に記載するよう求めています。
- 農薬を使用した年月日
- 農薬を使用した場所
- 農薬を使用した農作物等
- 使用した農薬の種類又は名称
- 使用した農薬の単位面積当たりの使用量又は希釈倍数
条文は「記載するよう努めなければならない」で、努力義務です。ただ、県によっては、より強く指導しているところもあります。京都府の資料は「京都府では、必ず記帳するよう指導しています」と書いています。お住まいの県や、出荷先の決まりも確かめてください。
GAP に取り組んでいるとき
農林水産省の「国際水準GAPガイドライン」の指導マニュアル(青果物)は、農薬の使用記録について、上の5つに加えて、散布機など防除に使った機械・器具を含む使い方と、作業者名も残すとしています。肥料については、施肥した場所・施肥日・肥料等の名称・施肥量・施肥方法(散布機械を含む)・作業者名の6つです。
収穫と出荷の記録を、日付や畑の名前で栽培の記録と結び付けておくことも挙げています。ガイドラインは、記録をまとめる単位(ロット)を大きくすれば日頃の記録はしやすいけれど、問題が起きたときに出荷を止めたり回収したりする範囲も大きくなる、と書いています。
この指導マニュアルは、GAP に取り組む農場向けの手引きで、法律ですべての農家に義務づけられたものではありません。
特別栽培の表示をするとき
特別栽培農産物として表示する場合は、国のガイドラインに沿って、栽培管理の記録をつけます。畑の番号と所在地、作物名・品種名・栽培面積、作業の実績、使った資材の名前・量・時期、収穫量と出荷量などです。県が参考の様式を出していることもあります。
就農の支援を受けているとき
就農準備資金や経営開始資金を受けている人は、国の要綱で、報告や作業日誌を出すことになっています。
- 就農準備資金(研修中): 半年ごとに研修状況報告書を出します。先進農家などでの研修では、研修日誌を添えます
- 経営開始資金: 交付を受けている間は、毎年7月末と1月末までに出す就農状況報告に、作業日誌の写しを添えます(国の様式は「月日・作業内容・作業時間」)。交付の期間が終わったあとも5年間、同じ時期に、直近6か月の作業日誌(国の様式では、月・週ごとの作業内容と作業時間)を出します
出す先や細かい手順は、地域で違います。県や市町村、農業経営・就農支援センターに確かめてください。
会社に出す日報
会社の日報は、会社の様式に従います。何を書くかは会社によって違い、決まった形があるわけではありません。
たとえば、香川県が紹介している農業法人の事例では、作業の終わりに日報を書く時間を仕事の一部として設け、作業時間や畑の状態を書いています。作業は番号で簡単に記録できるよう工夫しているそうです。
様式がない、または何を書けばいいか分からないときは、書く前に、何のための日報なのか(作業時間の集計なのか、畑の様子の共有なのか)を、会社に一度聞いておくと迷いが減ります。
3.自分のための記録は、どこまで書く?
ここからは、自分があとで振り返るための記録の話です。会社や制度で決まっている記録は、上の決まりのとおりに残してください。
まずは3つだけ
- 日付
- 畑(ふだんの呼び方でかまいません)
- 作業(収穫、調製、出荷など)
量や気づいたことは、余裕がある日に足せば十分です。一日に同じ作業をいくつかの畑でしたときは、まとめて一行にしてもかまいません。三重県の農業技術センターがつくった記帳の仕組みも、一つの作業を何枚もの畑で行うことが多いとして、まとめて記録できるようにしていました。
分からないことは、確認待ちにする
数や内訳を覚えていないときは、推測で埋めずに「確認待ち」と書いておきます。空欄のまま忘れるより、あとで出荷の伝票などで確かめられます。
記入例
ここに載せるのは、説明のための例です。実際の作業の記録ではありません。
自分の畑を持つ人
忙しい日
```11/12(木)西の畑 ブロッコリー 収穫 6ケース```
余裕がある日
```11月12日(木)晴れ・西の畑(ブロッコリー)収穫 6ケース(L・M の内訳は確認待ち)・午後 調製・箱詰め、出荷・気づいたこと:東の畑の南の端、キャベツの外葉に穴。次に畑へ行くときに確認する・明日:西の畑の続き。雨なら箱の準備```
法人で働く人(自分のためのメモ)
会社に出す日報とは別に、自分のために残すメモの例です。自分の手帳やスマートフォンに残すものなので、同僚の名前や、会社の取引先・売上など、勤務先の情報は書かないようにします。
忙しい日
```11/12(木)3番の畑 キャベツ 収穫```
余裕がある日
```11月12日(木)・3番の畑 キャベツ 収穫(午前)。午後は調製・教わったこと:箱の詰め方(写真あり)・次に聞くこと:箱に入れる数の決め方```
研修中の人
研修日誌の様式が決まっている場合は、そちらに書きます。下は、自分の振り返り用の例です。
忙しい日
```11/12(木)大根 収穫と洗い```
余裕がある日
```11月12日(木)研修 8:00〜16:00・大根 収穫、洗い、箱詰め・教わったこと:洗い場の片付けの順番・分からなかったこと:出荷できない大根の線引き。次回聞く```
書けなかった日は
自分のための記録なら、書けなかった日を責める必要はありません。思い出せることだけを、思い出したときに書けば十分です。日付がはっきりしないときは「11月中旬ごろ」のように、分かる範囲で残します。
4.続けにくいのは、手間がかかるから
記録が続かないのは、気持ちの問題だけではありません。農業の作業記録の研究でも、入力の手間が記録の仕組みを使う人が増えないネックになっている、と書かれています。福島県の研究者が水田作の2つの法人を調べた報告では、作業時間のうち、どの田んぼ(ほ場)の作業かが入力されていない割合が、57.5%と31.8%でした。「記帳の仕方が分かりにくい」という問いには、経営者より従業員のほうが当てはまると答える傾向があり、報告は、ほ場の情報を入力しやすくする工夫や、従業員と記帳の仕方を共有することを課題に挙げています。
項目を減らす、まとめて書く、分からないところは確認待ちにする。続けやすい形を、自分で選んでかまいません。
5.紙でも、スマートフォンでも
ここまでの記入例は、紙のノートでもそのまま使えます。
スマートフォンで残したい場合、NouMan のアプリ「NouMan Worker」でも、畑ごとに作業を記録できます。作業日と作業種別だけで保存でき、作物・量・メモ・写真は、余裕がある日に足せます。ただし、農薬の帳簿や交付金の作業日誌など、様式が決まっている記録の代わりになるかは、その決まりを出しているところに確かめてください。
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この記事は、2026年10月30日時点の公開資料をもとにしています。最新の決まりは、各機関の公式の資料でご確認ください。
出典
- 農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令(平成15年農林水産省・環境省令第5号)第9条(帳簿の記載) 資料を開く
- 農薬の適正使用について(農薬使用の記帳) 資料を開く
- 国際水準GAPガイドライン 指導マニュアル(青果物 Version1.1) 資料を開く
- 国際水準GAPガイドライン 11 出荷・収穫の記録 資料を開く
- 国際水準GAPガイドライン 58 農薬の使用記録 資料を開く
- 国際水準GAPガイドライン 64 肥料等の使用記録 資料を開く
- 特別栽培農産物に係る表示ガイドライン 資料を開く
- 栽培管理記録簿 参考様式(特別栽培) 資料を開く
- (参考)管理記録例 栽培管理記録(特別栽培) 資料を開く
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- 圃場図と連動した農作業日誌記帳システム(成果情報) 資料を開く
- RFIDを用いた低価格な農作業記録自動収集システムの開発(農業情報研究 26(4)) 資料を開く
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