企業を読み解くモスバーガーの一個をたどる(後編)

モスの野菜は、どんな基準で、どの畑から来ているのか7分結球のレタスと、季節をつなぐ産地

公開 2026年10月25日

イメージ写真。温室の中で、緑の葉の間に赤く熟したトマトが房になってなっている。人・建物・文字は写っていない。
温室のトマトのイメージ。モスの産地・モスファームの畑や、同社の商品ではありません(写真: erkan budak / Pexels)

この記事は「モスバーガーの一個をたどる」の後編です。前編から読む

7分結球のレタス、L玉のトマト、季節で移る産地。モスの野菜の基準と産地が、生産者とどうつくられてきたのかを、会社の公開資料と産地のレポートからたどる後編です。

モスバーガーの店では、生野菜が丸のまま届き、店の人が手洗いして仕込み、注文を受けてからハンバーガーをつくります。店では毎日、届いた野菜の産地を確かめ、産地と農家の名前をお客さんに伝えています(前編「一個は、店でどう組み立てられているのか」)。

後編では、その野菜の側をたどります。輪切りにされるトマトや、重ねられるレタスは、どんな基準で、どの畑から来ているのか。会社の公開資料と公式サイトの産地のレポートを読むと、畑の基準が産地と一緒につくられてきたこと、季節で産地が移ること、店と畑が直接会う場が続いてきたことが見えてきます。前編と同じく、公表されていること・会社の説明・生産者の言葉・NouManの読み解き(枠の中や「〜と読めます」)を書き分けています。

Workerプラス編集長より

先にまとめると

  • レタスの「7分結球」は、長く取引する産地との取り組みから生まれた基準
  • 季節で産地を移し、生産者と共同で農場(モスファーム)もつくってきた
  • 店の約8割は加盟店。店の人が畑で収穫する催しも続く

(いずれも会社の公開資料から)

1.畑の基準は、畑と一緒につくられた――7分結球とL玉

レタスの「7分結球」

モスのレタスには、「7分結球」という基準があります。会社は、2025年11月の産地のレポートで、こう説明しています。

「約30年前から契約産地として支え続けてくださっている、JAれいほくモスレタス部会。モスのレタスのこだわりである『7分結球』は、当時、部会の皆さんとの取り組みを進める中で生まれた基準です。」

JAれいほくモスレタス部会は熊本県天草郡苓北町にあり、およそ12月から3月ごろまで、全国の店へレタスを出荷しています。部会の名前に、取引先の名前が入っています。

7分結球を数字でどう定めているのかは、公開資料にはありません。代わりに、部会の代表生産者の言葉が、2017年の産地のレポートに残っています。

「レタスは芯を押してみて、わずかに動く位がベストです。」

レポートは、この言葉を「七分結球を基準とするモスのレタスにぴったり」と結んでいます。

夏の晴れた日の、長野県野辺山のレタス畑。奥に八ヶ岳の山並み。手前は収穫の済んだ畝、右は収穫前のレタスの畝で、数人が段ボール箱にレタスを詰め、左にトラクターが止まっている。人の顔は判別できない。
2010年8月撮影。長野県南牧村野辺山の、高原のレタスの収穫。モスの産地・モスファームではありません写真: On-chan / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)、切り抜き・縮小

輪切りにも向くトマト

トマトにも、店の使い方とつながる特長を持つ品種があります。2017年6月に、モスと千葉県の農業法人テンアップファームの共同出資で設立された「モスファーム千葉」は、富里市の農場で5月から11月にトマトを育てています。

2019年の産地のレポートは、ここで育てる「みそら」という品種について、まず食味のよさを挙げたうえで、「ゼリー部分の部屋数が多く、モスバーガーで使用する輪切りに適したトマト」でもあり、「モスバーガーの規格サイズであるL玉」が多くとれる品種だと紹介しています。この品種を選んだ理由として書かれているのは、「おいしいトマトの産地としてブランド化するため」です。

同じレポートで、取締役の生産者はこう話しています。

「決して栽培しやすい品種ではなく、2018年は猛暑でモスバーガーさんの規格に合格したのは20%未満です。」

畑の管理

公式サイトによると、農薬と化学肥料について、「当初の目標として、産地地域における慣行基準の5割以上の削減をモスと農家さんが協力して目指しています」。安全確認のため、抜き打ちで残留農薬の検査もしています。

2019年度からは、会社が独自に作った217項目の点検(MOS-GAP点検)を、全産地で行っています。公式サイトには、「モスの担当者はほぼ毎日どこかの産地を訪問しています」とも書かれています。

生産者の側には、台帳の提出や点検への対応があります。トマトでは、先の生産者が話していたように、2018年の猛暑で規格に合格したのが20%未満だった年もありました。

NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方

モスの資料では、7分結球は産地との取り組みのなかで生まれた基準として、L玉や輪切りへの向き不向きは店での使い方と結び付けて説明されています。生産者から見ると、取引先の規格を「どう切られ、どう重ねられるためのものか」から見ていくと、品種や作り方を相手に説明する手がかりになりそうです。

2.季節をつなぐ――産地のリレーと、モスファーム

公式サイトの産地情報には、「同じ野菜も季節とともに、産地が移り変わります」とあります。冬から春のレタスを受け持つ熊本・苓北の部会のように、産地は季節ごとに役割を分けています。

同じ会社の中で、平地と高地の農場を使い分ける例もあります。2015年に設立された「モスファームマルミツ」は、熊本県の八代の農場で11月から6月に、標高800mの阿蘇の農場で7月から11月にトマトを育てています。同じ年に設立された「モスファーム信州」の農場は標高700〜1,300mにあり、5月から11月のレタスの生産拠点です。

記事で紹介した産地の、レタスとトマトの時期

記事で紹介した5か所の時期を1月から12月の帯で示した図。レタスは熊本・苓北の部会がおよそ12月から3月ごろ、長野のモスファーム信州が5月から11月。トマトは千葉・富里のモスファーム千葉が5月から11月、熊本・八代のマルミツが11月から6月、標高800mの阿蘇のマルミツが7月から11月。冬は熊本の平地、夏は長野や阿蘇の高地が受け持つ形になっている。
※5か所だけの例で、モスの産地の全体ではありません
対象: 記事で紹介した5か所だけ(契約産地は全国で133産地、2025年度)、産地のレポート(2017年5月・2018年10月・2019年1月・2025年11月)の記載/単位: 月/時期は各レポートの書き方のまま(苓北は出荷、信州は生産、千葉・八代・阿蘇は栽培の時期)。苓北は「およそ」の時期のため薄い色。「ファーム」はモスファーム、「部会」はJAれいほくモスレタス部会、「マルミツ」はモスファームマルミツ(阿蘇の農場は標高800m)
出典: モスフードサービス「産地だより」2017年5月(信州)、2018年10月(マルミツ)、2019年1月(千葉)、2025年11月 第9号(JAれいほくモスレタス部会)

マルミツの社長は、2018年の産地のレポートで、こう話しています。

「1年で最もきついのは5月。阿蘇の高冷地の農場の定植と、八代の農場の収穫最盛期が重なって、この時期だけは本当に忙しいですね。」

地域の生産者と、共同でつくる農場

モスファームは、モスと地域の生産者が共同で出資してつくった農業法人です。会社は目的を、「天候不順や栽培状況によってモスバーガー店舗の野菜調達が十分でない状況を回避するため」と説明しています。いまは北海道から熊本まで7社があります。

静岡の「モスファームすずなり」は、その一つです。2015年の産地のレポートによると、前身の鈴木農園は2003年から、静岡県内の店にレタスを出荷してきました。レポートは、設立の背景を、「度重なる異常気象や後継者不足などで、10年先の安定供給体制をいかにするべきか悩んでいたモスバーガー側」と、「法人化を果たし、耕作放棄地の解消、若手農業者の育成に先進的に取り組んでいた鈴木さんたち」の考えが重なったもの、と書いています。2014年4月に設立され、静岡県磐田市の3.6haの耕作放棄地を開墾して拠点にしました。

その年の秋には、台風18号が静岡県に上陸しました。2014年の秋から冬には、「生産計画の30%も出荷できないような時期もあり」と、同じレポートは伝えています。

2019年には、7つのモスファームの役員などが長野に集まる会議が開かれました。そこでは各社から、異常な気象や生産物の単価の下落、技術の継承といった課題が出され、解決策として「モス供給野菜以外の品目の栽培への挑戦、オフシーズンでの事業、天候リスクヘッジへの地理的な分散」が話し合われています。

契約産地は全国で133産地あります(2025年度)。ただし公式サイトには、「天候や調達の都合により、一般の野菜を使用する場合があります。」との注記もあります。

NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方

収穫の時期が限られる野菜を一年中使う買い手にとって、産地と産地の間にできるすき間は大きな課題です。モスはそれを、季節ごとに産地を分けることと、生産者との共同出資という二つの形で埋めようとしてきた、と読めます。一方で、共同でつくった農場の側でも、モスに出す野菜以外の作物や、出荷のない時期の仕事が話し合われています。特定の買い手との関係を深めることと、自分の経営の作物や時期の組み合わせを考えることは、同時に必要になるのかもしれません。

3.店と畑が会う――加盟店と、産直野菜フェスタ

国内のモスバーガーの店は、2026年3月末で1,310店。そのうち1,081店が加盟店です(NouManの計算で約82.5%)。

国内のモスバーガーの店のうち、加盟店と直営店

2026年3月末の国内のモスバーガーの店1,310店の内訳の横棒グラフ。加盟店は1,081店で約82.5%、直営店は229店で約17.5%(割合はNouManの計算)。
※割合はNouManの計算(1,081÷1,310など)
対象: 国内のモスバーガーの店(1,310店)、2026年3月末/単位: 店/店の数は公表値、割合はNouManの計算
出典: モスフードサービス 有価証券報告書 第54期(2026年3月期)27頁

加盟店の会「モスバーガー共栄会」は1980年に発足しました。会社は、「『FCビジネスは人を信じることから始まる』との信念から」発足させたと説明しています。2006年からは、加盟の契約を自動更新から5年ごとの「契約再締結」に変え、「双方が『次の5年もともに歩む意志があるか』を改めて確認し合う」としています。統合報告の図では、2025年度の平均加盟年数は27.0年です。

店と産地をつなぐ催しもあります。「モスの産直野菜フェスタ」では、店長や店のスタッフが、キャンペーンの初日か前日に、近くの協力農家で野菜を収穫し、その野菜を店で出します。2014年から全国に広がり、2016年の発表では、開催地は「旬を迎える時期にあわせて移動し、最後は沖縄へとリレー方式で実施」すると説明されています。会社はこの取り組みを、「協力農家との関係づくりを長年行い、丸のまま納品された生野菜をお店で仕込みをしている、モスバーガーならではのもの」と説明しています。

2015年に静岡県磐田市で開かれたときは、静岡県内の店のスタッフ30名が「早朝5:00前に集合」し、モスファームすずなりでレタスを収穫して、コンテナに詰め、トラックの荷台に運ぶまでを体験しました。農場の側は、4時30分には準備をしていました。産地のレポートには、「いつもは収穫されたきれいなレタスが、当たり前のように店舗に納品されています」という一節があります。

逆向きの行き来もあります。公式サイトは、店のスタッフの産地への訪問を「推進」するとともに、「農家さんには店舗でのハンバーガー作りを体験してもらい」と書いています。

NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方

会社は、店のスタッフが産地を訪ねる目的を「実際の栽培現場を体感し、その感動をお客さまに伝え」ることと書き、産直野菜フェスタは加盟店の会である共栄会が担う地域密着の活動の一つとしています。店の約8割が加盟店のチェーンで、丸のまま届く野菜を店で仕込むことと、店の人が畑を知る場が、加盟店の側の活動としても続いてきた、と読めます。生産者から見ると、取引の相手は本部の購買の担当者だけでなく、自分の野菜を切ってお客さんに出す店の人でもある、という見え方ができます。会社は、2015年度の開催期間中の売上が全開催平均で前年比約110%だったと発表しています。店の人の定着や、産地との取引にどう影響したかは、資料からは分かりません。

4.農家から見ると:一個のハンバーガーを、逆にたどる

ここからは、NouManの読み解きです。モスが特定の作物・規格・産地を求めている、あるいは仕入れ先を募集しているという意味ではありません。

NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方

  • 自分の野菜は、どう切られ、どう重ねられるのか。 モスの資料では、トマトは輪切りにされ、10番目の手順で「慎重に」のせられます(前編)。L玉や輪切りへの向き不向きは、その使い方とつながっています。自分の野菜は、相手の店や工場で、どんな形にされて使われているでしょうか
  • 規格は、どこで生まれたのか。 7分結球は、産地との取り組みのなかで生まれた基準として説明されています。いま向き合っている取引先の条件は、何のための条件か、相手と話したことがあるでしょうか
  • どの季節を受け持っているのか。 産地は季節で役割を分け、同じ会社の中でも平地と高地を使い分けています。自分の畑は、相手の一年のなかのどの時期を受け持っているのでしょうか
  • 記録は、名前が店に出る前提。 産地の表示は、農家が出す台帳から始まっていました(前編)。自分の記録は、だれに、どこまで届いているでしょうか

一枚の輪切りのトマトから逆にたどると、L玉が多くとれる品種と、それを育てる畑の苦労、季節で移る産地、台帳と点検、店内の産地の掲示、そして2015年の早朝に磐田の畑へ集まった店の人たちに行き着きます。モスが届けようとしている価値は、一つの言葉よりも、こうしたつながりの一つひとつに表れている、とNouManは読みました。

補足

この記事は、2026年10月22日時点の公開資料をもとにしています。最新情報は、同社の公式サイト等でご確認ください。

出典

  • MOS REPORT 2026(統合報告) 株式会社モスフードサービス、2026年10月15日(2026年10月22日確認) 公式IR(PDF)
  • 有価証券報告書 第54期(2026年3月期) 株式会社モスフードサービス、2026年6月22日(2026年10月22日確認) EDINET(PDF)
  • モスの生野菜(公式サイト) 株式会社モスフードサービス(2026年10月22日確認) 資料を開く
  • 野菜の産地情報(公式サイト) 株式会社モスフードサービス(2026年10月22日確認) 資料を開く
  • モスの日(公式サイト) 株式会社モスフードサービス(2026年10月22日確認) 資料を開く
  • 産地だより 第9号 JAれいほくモスレタス部会 株式会社モスフードサービス、2025年11月26日(2026年10月22日確認) 公式(PDF)
  • 産地だより(2015年7月 すずなり/2015年12月 産直野菜フェスタ/2017年5月 信州/2017年12月 れいほく/2018年10月 マルミツ/2019年1月 千葉/2019年11月 代表者会議) 株式会社モスフードサービス(2026年10月22日確認) 産地だよりの一覧
  • 「モスの産直野菜フェスタ」延べ50開催へ 株式会社モスフードサービス、2016年7月21日(2026年10月22日確認) 発表(PDF)
  • 沿革 1972年〜1989年(企業サイト) 株式会社モスフードサービス(2026年10月22日確認) 資料を開く
  • 取引先とともに(企業サイト) 株式会社モスフードサービス(2026年10月22日確認) 資料を開く

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