企業を読み解く決算書の読み解き・ヤオコー編(全4回の第4回)

ヤオコーの売上8.1%増のうち、出店の分はどれくらい?全店と既存店の差、首都圏への出店、「センター等」の投資

公開 2026年10月18日

スーパーの棚に、箱入りの食品や瓶の調味料など、加工食品がたくさん並んでいる写真(上から見下ろした角度)。
スーパーの店内イメージ(写真: Swarup Sarkar / Pexels)。ヤオコーの店舗ではありません

ヤオコーの売上は、この6年、既存店の伸びに毎年2〜5ポイントほど上乗せされる形で伸びてきました。2026年3月期は、客数×買上点数を目安にすると、売れた品の数の増加の多くが新しい店から来ていると読めます。7店のうち3店は東京都。2027年3月期の投資計画では「センター等」が2倍以上に増えます。

回1(第1回「ヤオコーは何で稼いでいる?」)で見たとおり、ヤオコーの2026年3月期の売上高は8.1%増えました。この伸びは、前からある店の伸びなのか、新しい店が増えた分なのか。この回は、全店と既存店の数字の差、どこに店を増やしているか、新しい店の規模、投資の中身から、買い手であるヤオコーの成長の仕方を読みます。数字はすべて事業会社ヤオコー単体のものです。

1.全店と既存店の差:毎年、出店の分が2〜5ポイント

公表されていること

ヤオコーの2026年3月期の売上高は、全店で8.1%増、既存店(以前から営業している店)で4.2%増でした。客数は、全店で5.1%増、既存店で1.3%増です。全店の一品単価は4.0%増、買上点数は1.2%減でした(既存店はそれぞれ3.9%増、1.0%減)。

全店と既存店の差(売上で3.9ポイント、客数で3.8ポイント)は、おおまかには新しい店の分の目安になります。6年分を並べると、次のとおりです。

年度(3月期)全店の売上既存店の売上差
2021年12.1%増9.1%増3.0ポイント
2022年5.8%増0.7%増5.1ポイント
2023年4.4%増1.7%増2.7ポイント
2024年9.8%増7.7%増2.1ポイント
2025年10.3%増6.0%増4.3ポイント
2026年8.1%増4.2%増3.9ポイント

全店と既存店の、売上高の前の年からの伸び(6年)

ヤオコー単体の2021年3月期から2026年3月期までの、全店と既存店の売上高の前の年からの伸びの横棒グラフ。全店は12.1%、5.8%、4.4%、9.8%、10.3%、8.1%の増加、既存店は9.1%、0.7%、1.7%、7.7%、6.0%、4.2%の増加。どの年も全店が既存店を2〜5ポイントほど上回る。
※全店と既存店の差は、新しい店の分のおおまかな目安で、正確な分け方ではない(既存店の基準は資料に書かれていない)
対象: ヤオコー単体、2021年3月期〜2026年3月期(各年4月〜翌年3月)/単位: 前の年と比べた増加(%)/いずれも公表値(前期比を増減に書き換え)
出典: ブルーゾーンホールディングス「第1期 決算参考資料(2026年3月期 決算概要)」11.〔ヤオコー〕売上・客数等の営業数値の状況

差はNouManの計算です。ヤオコーの売上は毎年、既存店の伸びに、出店による2〜5ポイントほどが上乗せされる形で伸びています。既存店の伸びが小さかった年(2022年3月期の0.7%増など)は、出店の分が売上の伸びの大半を占めました。

ただし、この差は正確な分け方ではなく、目安です。どの店を「既存店」に数えるかの基準は資料に書かれておらず、差には前の年に開いた店の分も含まれる可能性があります。

2.どこに店を増やしているか

公表されていること

ヤオコーの店の数は、2026年3月期に195店から202店になりました(出店7店、閉店0店)。2027年3月期は8店を出店し、閉店はなく、210店になる見込みです。

都県2025年3月末2026年3月末
埼玉県104店106店
群馬県17店17店
千葉県33店34店
栃木県6店6店
茨城県7店7店
神奈川県14店15店
東京都14店17店
合計195店202店

2026年3月期の7店のうち3店は東京都で(杉並区、板橋区、福生市)、杉並桃井店は東京23区で初めての店です。2027年3月期の出店計画には、神奈川県相模原市、埼玉県さいたま市(2店)、東京都八王子市、千葉県船橋市、埼玉県越谷市などの店が挙がっています。

有価証券報告書に載っているヤオコーの中期経営計画は、出店について「ドーナツエリアを中心とした出店継続」を掲げています。「ドーナツエリア」がどの範囲を指すかは、資料では説明されていません。

3.新しい店の規模

公表されていること

2026年3月期に開いた7店の売場面積と、会社が見込む年間の売上(年商見込)は次のとおりです。

店所在地売場面積年商見込
杉並桃井店東京都杉並区1,686㎡30億円
松戸古ケ崎店千葉県松戸市1,840㎡18億円
まるひろ上尾SC店埼玉県上尾市2,381㎡29億円
岩槻本丸店埼玉県さいたま市2,518㎡25億円
板橋四葉店東京都板橋区1,463㎡20億円
福生牛浜店東京都福生市1,963㎡20億円
東戸塚店神奈川県横浜市1,798㎡24億円

年商見込は会社の見込みで、実績ではありません。7店を合わせると166億円です(NouManの計算)。売場面積は1,463〜2,518㎡で、東京23区の2店(杉並桃井店、板橋四葉店)は7店の中で売場面積が小さいほうです。

4.投資の中身:2027年3月期は「センター等」が2倍以上に

公表されていること

ヤオコーの設備投資は次のとおりです。

投資の区分2026年3月期(実績)2027年3月期(見込)
店の新規出店174億円143億円
既存店の活性化95億円55億円
その他(センター等)39億円86億円
合計308億円283億円

端数処理により、合計が一致しない場合があります。

2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)の見込みでは、出店と既存店への投資が減る一方、「その他(センター等)」は39億円から86億円へ、2倍以上に増えます。「センター等」が何の施設なのか(物流センター、加工の施設など)は、資料に書かれていません。

5.NouManの読み解き

NouManの読み解き

全店と既存店の数字を並べると、売上の伸び方だけでなく、売れた品の数の増え方にも違いが見えます。客数×買上点数を「売れた品の数」の目安とすると、2026年3月期は既存店が約0.3%増、全店が約3.8%増です(NouManの計算。買上点数は指標化された数字で、実際の販売数量ではありません)。既存店では、来る人は増えても1回に買う点数は減りました。その中で、売れた品の数の増加は、主に店の数が増えた分から来ていると読めます。

その新しい店は、7店のうち5店が埼玉県の外にあります。店の数の半分以上が埼玉県にあるチェーンが、2026年3月期は東京都に3店、神奈川県と千葉県にも1店ずつ店を開き、23区にも初めて出店しました。これは1年分の動きですが、2027年3月期の出店計画にも、埼玉県の店とともに、東京都や神奈川県、千葉県の店が並んでいます。

投資の配分も動いています。2027年3月期の計画では、金額ではまだ店への投資(198億円)のほうが大きいものの、「センター等」は2倍以上になります。店を増やしながら、店の外にあるものにもお金を振り向ける計画だと、数字から読み取れます。

6.生産者にとって

ここからは、ヤオコーが特定の地域や作物の取引先を求めているという意味ではなく、この分析から考えられるヒントです。

  • 買い手の扱う量が、どこで増えているかを見る。 既存店で1回に買う点数が減る中、売れる品の数は、主に新しい店の分で増えていると読めます。買い手がどの地域に、どんな規模の店を増やしているかは、自分の作物がどの地域のお客さまに届きうるかを考える手がかりになります
  • 店の数と、品目ごとの仕入れは別の話。 出店の数から、品目ごとの仕入れの増減は分かりません。取引の可能性は、品目や時期、条件ごとに相手へ確かめる必要があります

ヤオコーの売上は、前からある店の伸びに、毎年、新しい店の分が上乗せされる形で伸びてきました(全店と既存店の差による目安)。自分の作物を扱う買い手は、いま、どこで、どんな形で伸びているのか。その伸び方を知ることは、自分の作物の届け先を考えるときの手がかりになりそうです。

補足

この記事は、2026年10月18日時点の公開資料をもとにしています。最新情報は、各社・各機関の公式サイト等でご確認ください。

出典

  • 第1期 決算参考資料(2026年3月期 決算概要)6.店舗の状況、9.〔ヤオコー〕設備投資・減価償却の状況、11.売上・客数等の営業数値の状況 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 添付資料 P.3(株式会社ヤオコーの項:出店・成長戦略) 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年5月11日 公式IR「決算短信/決算参考資料」の一覧
  • 有価証券報告書-第1期(2025/04/01-2026/03/31)中期経営計画の骨子(PDF p.9〜10)、連結財務諸表注記(収益認識関係、PDF p.90) 株式会社ブルーゾーンホールディングス(ヤオコーの持株会社)、2026年6月17日 公式IR「有価証券報告書/半期報告書」の一覧

次に読む