企業を読み解く

ミラノ風ドリアを、毎日出し続けるためにサイゼリヤが苗から店まで重ねてきた工夫

公開 2026年10月22日

イメージ写真。真上から撮った玉レタスの畑。土の上に、同じ間隔で植えられたレタスが横に何列もまっすぐ並んでいる。人・建物・文字は写っていない。
レタス畑のイメージ。サイゼリヤの契約農家の畑や、同社の店舗・商品ではありません(写真: K / Pexels)

1983年から続くミラノ風ドリアを、サイゼリヤはどうやって毎日出し続けてきたのか。値下げで増えた量に合わせてつくった工場、店の作業を軽くする工夫、レタスの苗から関わる契約農家とのつながりを、会社の公開資料で追います。原価が上がるいまも続く見直しを含めて、農家の野菜が一皿にどうつながるのかを考えます。

イタリアンレストランのサイゼリヤには、40年以上続いている一皿があります。1983年に商品になった「ミラノ風ドリア」です。いまの価格は税込300円です。

サイゼリヤの国内の店には、2026年8月期(2025年9月〜2026年8月)の1年間で、のべ約2億3,640万人のお客さんが来ています。1日あたりにすると、およそ65万人です(NouManの計算。ドリアを頼んだ人ではなく、店に来たお客さん全体の数です)。

それだけのお客さんに、毎日、同じ一皿を出す。その裏側を会社の公開資料でたどると、店の厨房だけでなく、オーストラリアと福島の工場、レタスの苗、契約農家との約束ごとにまで、工夫が重ねられていることが見えてきます。この記事では、その工夫を一つずつ見ていきます。最後に、野菜を育てて売る側から見たとき、自分の作物がこうした一皿にどうつながりうるのかを考えます。

先にまとめると

  • 創業者の正垣泰彦氏の著書の題は『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』です。本人は題に「目の前の現実を謙虚に受け入れて、本当にお客様が満足されることは何かを見極めよう」という思いを込めた、と書いています
  • ミラノ風ドリアは1999年に480円から290円に値下げされ、会社によると売上数量は「3倍近く」になりました。そのあとに、ソースをつくるオーストラリアの工場と、米を炊く福島の工場が続きます
  • 福島の工場では、契約農家に渡すレタスの苗も育てています。一皿の工夫は、畑の手前から始まっています
  • 原価が上がるいまも、組織・工場・価格の方針の見直しが続いています

この記事での書き分け

種類内容
公表されていること有価証券報告書・決算資料の数字や記載、公式サイトに載っている価格など
会社の説明会社が公式サイトや資料で述べている考え・意図・経緯
NouManの読み解きそれらを組み合わせたNouManの解釈。枠の中や「〜と読めます」「〜と見えます」で示します

1.「売れているのが、おいしい料理」——思い込みを、お客の選択で確かめる

サイゼリヤの創業者、正垣泰彦氏には、『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』という題の著書があります(日経BP、2011年)。

出版社のサイトに掲載された本人の「はじめに」には、創業のころの話が書かれています。最初の店は青果店の2階で、お客さんがなかなか来ませんでした。そこでメニューの値段を5割引きにし、それでも来ないので7割引きにしたところ、1日20人だった客が600〜800人に増えた、という回想です。社員に十分な給料を払える利益をどう確保するかを考えた箇所では、「売り上げは客数×客単価。お客様のことを考えると、客単価は上げられない。ならば、客数を増やすしかなかった」と書いています。

同じ「はじめに」で、正垣氏は、「自分の店の料理はうまい」と思ってはいけない、と書いています。そう思ってしまうと、売れないのはお客や景気のせいだと考えるしかなくなり、「もう改善を進められなくなってしまう」からだ、と。正垣氏は「良いモノは売れる……」という考え方を、地球の周りを太陽や惑星が回っているという昔の「天動説」にたとえ、「科学は実験を通して、自分の仮説(思い込み)が間違っていることを教えてくれる」とも書きます。そのうえで、題には「目の前の現実を謙虚に受け入れて、本当にお客様が満足されることは何かを見極めようという私の思い」を込めた、としています。

つまりこの題は、「売れていれば何でもおいしい」という意味ではなく、作り手の思い込みを戒め、お客が実際に選んでいるかどうかという現実から学び直す、という本人の姿勢を表したものです。

NouManの読み解き

NouManがこの言葉に注目するのは、それが心構えにとどまらず、毎日ドリアを出し、お客の選び方を見て、直していく、という実践の積み重ねとして、会社のあちこちに形になっているように見えるからです。以下で見る工場・店・畑の工夫は、その積み重ねの具体的な姿として読めます。

長く選ばれている料理が、先の計画を可能にする

NouManには、この姿勢が品ぞろえの考え方にもつながっているように見えます。公式サイトでは、「長年販売している人気商品を中心に品揃え」していると説明されています。こうした商品は販売数が安定しているので予測しやすく、原料の調達や食材の生産を前もって計画できる。これを「計画生産」と呼び、「大量に売れる人気商品は、工場で効率よく生産することが可能です」とも書かれています。

同社が就職希望者に向けて、仕事や企業文化を紹介する公式採用サイトでは、さらに具体的に、店で「いつ・どのくらい商品の販売があるか」のデータを管理していて、「数カ月から数年先まで必要な食材の量を予測すること」ができ、その予測に基づいて「産地も工場も先々の『計画生産』を行う」と説明されています。

会社は、この一続きの仕組みを「製造直販」と呼びます。

「製造直販とは、自ら素材開発・原料の調達→加工→配送→店舗での提供までの一連の流れを自社で一貫して行うことです。最大のメリットは、品質と価格を自分たちでコントロールできることです。」(公式サイト「自社工場の取り組み」)

ここで見込めるのは、店で売れる量です。天候まで決められるわけではなく、会社も主な食材の産地の一覧に「野菜は、季節・天候によって原産地が異なる場合がございます」と注記しています。

NouManの読み解き

お客が選び続けている料理を中心に置くので、販売の量が読みやすくなる。量が読めるので、畑や工場の計画を先に立てられる。会社の説明を順につなぐと、「売れているのがおいしい料理」という見方と、工場や産地の計画とが、同じ方向を向いていることが見えてきます。

2.ドリアの裏側:値下げで増えた量に、工場が続いていく

ミラノ風ドリアは、創業のころ、従業員がまかないとして食べていた「ご飯にミートソースとホワイトソースをかけたもの」から生まれたと説明されています。「こんなうまいものはない!」とみんなが言うので店で出すことに決め、1983年に商品になりました。材料は「ひき肉、トマト、たまねぎ、穀物(小麦・米)、牛乳。どれも世界中で好き嫌いなく食べられていて、どこでも手に入る食材です」と書かれています。

一番売れている料理を、値下げする

1999年、会社はこのドリアを480円から290円に値下げしました。公式サイトは「一番売れているメニューを値下げするという、大きな決断でした」と書いています。

同社の採用サイトが紹介する創業からの歩みでは、このときの値下げを、「商品内容は変えず一気に190円値下げ」し、商品の売上数量は「3倍近く」に増えたと振り返っています。続けて、「当然原価率は上がり、客単価も下がったが、それよりもお客様に喜んでもらうほうが先、という創業者の英断」だったと書いています。

増えた量を支える工場

値下げのあとに続いたのが、工場です。

年出来事区分・出典
1999年ドリアを480円から290円に値下げ。売上数量は「3倍近く」に会社の説明(公式サイト、採用サイトの歩み)
2000年7月オーストラリアに食材の製造の子会社を設立公表(有価証券報告書の沿革)
2001年福島県白河市に精米の工場(いまの福島工場)を建設公表(沿革では「福島精米工場」)、会社の説明(公式サイト)
2003年オーストラリア工場が稼働会社の説明(公式サイト)

福島工場は、「ミラノ風ドリアの販売量の拡大に伴い、2001年に建設」されたと説明されています。ドリア用のライスの精米と炊飯の大部分をここで行い、全店に届けています。店で使う米は、すべて国産米と表示されています。

なぜ工場で炊くのか。会社の採用サイトの説明はこうです。店ごとに炊いていると品質がばらばらになり、量が多いので作業もとても大変になる。工場でまとめて炊けば店の作業は楽になり、さらに時期によって最適な米と炊き方の条件を選ぶことで、品質そのものも上げられる。

ソースは、オーストラリアの工場でつくります。会社は「品質に磨きをかけながら価格を抑えるため、産地に近く、最適な原料を調達できるオーストラリアに工場を建設しました」と説明し、現地で調達した牛乳と牛肉で、ホワイトソースとミートソースをつくっています。採用サイトによると、ドリアのホワイトソースは、ミルクの風味を出すために「1食分で約500mlもの牛乳」を使います。「自社で必要な分だけ生産することで長期保存が不要」になる、とも書かれています。

NouManの読み解き

NouManが面白いと感じるのは、話の順序です。少なくとも福島工場について、会社は「工場があったから安くできた」ではなく、値下げで売れる量が増え、その量に合わせて工場をつくったという順に語っています(オーストラリアの工場は「品質に磨きをかけながら価格を抑えるため」と説明されています)。先に「この値段で出す」と決め、その値段で毎日出し続けられる仕組みを後から整えていく。創業のころに値段を大きく下げて客数を増やした回想(§1)とも、同じ向きの決め方に見えます。

ドリアについては「名物料理となった現在も、おいしさのための改善は続いています」と書かれています。2026年6月には「既存商品の品質向上のため」にグランドメニュー(通常のメニュー)を改定したことが、決算短信(決算の数字を早めに出す資料)で説明されています。

3.店の中の工夫:だれが立っても、同じ一皿に

一皿を毎日同じように出すための工夫は、店の中にも積み重なっています。採用サイトが紹介する歩みから、いくつか拾ってみます。

  • 1987年(18店): 初めて150席を超える店を開き、「オペレーションの合理化の試行錯誤」が始まる。無線で注文を飛ばす仕組みを入れ、トレーを持たない、注文を取る係と運ぶ係を分ける、といったルールがつくられていく
  • 1995年(120店): 店の調理を、ガスのオーブンからコンベア型のオーブンへ。「だれでも一定の品質の料理が作れ」るようになった
  • 1997年(160店): 最初の自社の工場が動き始める。公式サイトはこの吉川工場を「店舗作業の負担軽減を目的に設立された最初の工場」と紹介しています

工場の役割については、公式サイトで、原料を「店舗で調理しやすいように自社工場で加工して、すぐに使える形で届けています」と説明されています。それによって片付けや保管がしやすくなり、調理の手間も減り、「品質の安定と提供時間の短縮」につながる、とあります。細かな例もあります。神奈川工場では、イタリアから直輸入した大容量のオリーブオイルの缶を、調理で使いやすいように小分けし、必要な分だけ店に届けています。

店の作業そのものも、測って直す対象です。採用サイトは、数値にしにくい店の作業を、工程改善の考え方を使って数値にし、だれもが簡単に、素早く作業を覚えられるよう、作業の「楽・良・早・安」化に続けて取り組んでいる、と書かれています。

この取り組みは、いまの経営の課題にも挙がっています。有価証券報告書(上場している会社が毎年出す、事業と決算の報告書)は、会社が取り組むべき課題として、工場(同社は「コミッサリー」と呼びます)で店への「配送方法や配送形態を工夫することにより、店舗の作業負荷を減らし」ていくことや、店のキッチンやフロアの作業の標準化を挙げています。

最初からうまくいったわけではありません。1997年の最初の工場について、採用サイトの歩みは「生産に関する技術に疎く、当初は様々なトラブルが多発。発売開始から数週間で販売中止になった商品もあった」とし、「製造直販業になるための課題が多数あぶり出された」と振り返っています。

NouManの読み解き

コンベア型のオーブン、工場でまとめて炊く米、使いやすく小分けして届けるオリーブオイル。オーブンは「だれでも一定の品質の料理が作れ」るように、オリーブオイルの小分けは調理で使いやすくするために、と説明されています。並べると、どれも店に立つ人が違っても、同じ一皿が同じように出ることに向けた工夫として読めます。ここでの「品質」は、腕のいい料理人が一皿ずつ高めるものではなく、毎日ぶれずに出すものとして扱われている、と読めます。自分の仕事に置き換えるなら、「手間を一つずつ数え、減らせる手間を道具や前の工程へ移す」という見方になります。

4.畑とのつながり:苗・規格・量・集荷

ドリアの米とソースは工場でつくられます。では、サラダの野菜はどうでしょうか。サイゼリヤの野菜との関わりは、レタスを中心に、長い時間をかけてつくられてきました。

高原を開拓し、苗から関わる

公式サイトのサラダの紹介によると、「まだ18店舗だった頃に福島県・白河の地に農地を取得」し、標高800mの冷涼な土地でレタスの栽培が始まりました。続けて「2000年には、白河高原に東京ドーム約62個分(総面積280ha)の土地を購入」し、苗づくりから自社で行って契約農家に配る体制を整えた、とあります。

採用サイトは、この高原について、「周りからは無謀だと呆れる声もありましたが、自分たちで失敗をしながら開拓し、『実験農場』として活用できるまでに」なり、そこで「効率よくサラダがつくれる大玉レタス」が生まれた、と紹介しています(その土地のいまの使い方は公表されていません)。

レタスより前には、ルーコラ(ルッコラ)があります。会社は1996年、日本では手に入らなかったこのイタリアの野菜の栽培を、契約農家に依頼しました。採用サイトの歩みは、この取り組みが農林水産大臣賞で表彰されたこと、「外食産業が自店舗専用に委託栽培をする先駆け」となったことを記し、「栽培における難しさを農家とともに経験」したと書いています。

いまの仕組み

いまの仕組みの中心にあるのが、ドリアの米を炊く福島工場です。ここには「契約農家さん向けに提供するレタスの育苗工場」が併設され、レタスの苗を供給し、サラダ用の「集荷と出荷も担っています」と説明されています。

契約農家との関係については、次のように書かれています。

  • 「産地の契約農家と規格や購入量を決め、年間を通して安定した出荷ができる仕組みを構築しました」
  • 「規格の段階でサイズや見た目ではなく鮮度を重視し、産地で捨てられる野菜を減らしました」
  • 「当社の専用コンテナを使うことで農家の梱包作業を軽減」し、段ボールの使用も減らしている(以上、公式サイト「原材料の安定調達」)
  • 「サイゼリヤが決めた量を計画通りに生産してもらい、収穫した全量をサイゼリヤで買い上げるため、生産者の方は安定収入が見込めます」(採用サイト)

契約農家の数や地域、品目、価格の決め方、全量の買い上げがどの品目・契約に当てはまるのかは、公開資料には書かれていません。

このほか採用サイトは、東日本大震災の復興支援として仙台でトマト農場を始め、「今ではサイゼリヤにトマトを提供する1つの農場として機能しています」と紹介しています。

NouManの読み解き

並べてみると、サイゼリヤのいまの野菜との関わりは、苗・規格・量・集荷を通じて、畑と工場をつなぐことに重心があると読めます。苗を渡し、規格と量を前もって決め、専用のコンテナで集める。店で「毎日同じサラダ」を出すための準備が、種をまく前の段階から始まっている、ということです。規格の軸を見た目ではなく鮮度に置いたことを、会社は「産地で捨てられる野菜を減らしました」と説明しています。買い手が規格をどう決めるかが、畑で何が売り物になり、何が捨てられるかを左右する。農家の側から見ても、見落とせない点です。

5.いまも続く見直し:原価の変化にどう向き合っているか

こうした仕組みは、できあがって終わりではありません。2026年8月期には、為替や食材の値上がりで、国内の原価が大きく上がりました。

原価の動きを、要因ごとに示す

会社は決算説明資料(決算の内容を投資家向けに説明する資料)で、国内の営業利益が前の年からどう増減したかを、要因ごとに示しています。原価の部分は次のとおりです(会社の分析。△は利益を減らす方向)。

要因2025年8月期2026年8月期
為替の影響1.1億円△31.7億円
食材の単価△18.8億円(米・レタス・オリーブオイル等が悪化)△18.7億円(ハンバーグ、チキン等が悪化)
物流費△1.4億円△6.2億円
メニューミックス(売れる料理の組み合わせの変化)12.5億円10.3億円
その他ロスなど△3.3億円1.6億円
原価の合計△9.9億円△44.7億円

為替の影響は、円とほかの通貨の交換の割合が変わったことによる影響です。2026年8月期には、原価の要因の中でいちばん大きく利益を減らしました(一般に、円安になると、海外から買う原料の円での値段は上がります)。一方、売れる料理の組み合わせの変化は、2年とも利益を増やす方向に働いています。

公表されていること

国内(サイゼリヤ単体。国内の店と工場の数字)では、売上に対する原価の割合が45.9%(2025年8月期)から48.3%(2026年8月期)に2.4ポイント上がりました。一方、販売費及び一般管理費(人件費・家賃など)の割合は51.2%から48.8%に2.4ポイント下がり、営業利益率は2.9%から3.0%になりました。売上100円に対して、営業利益が3円ほどです(決算説明資料)。

国内の客数と客単価は、次のように動いています(決算説明資料。国内の数字)。

期客数客単価
2022年8月期1億2,940万人780円
2025年8月期2億499万人844円
2026年8月期2億3,640万人860円

2026年8月期は、前の年より客数が15.3%増え、客単価は1.9%上がりました(NouManの計算)。

会社が打っている手

この変化に対して、会社はいくつかの手を示しています。

  • 組織: 2026年8月期に、商品の開発・調達・加工・保管・物流に「グローバルな視野で取り組むことができる組織へ変更」した(決算短信)
  • 工場: 2025年8月期の有価証券報告書は、新しい岐阜工場(店で使う食材の加工の施設)に9,500百万円を投じる計画(2026年1月着手、2027年4月完了予定)を載せている
  • メニュー: 2026年6月に「既存商品の品質向上のため」グランドメニューを改定した(決算短信)
  • 価格の方針: 2026年10月14日の決算短信で、次の方針を示した

公表されていること

「メニュー価格方針は、原材料価格の高騰や、エネルギー等のコスト上昇が続く中、様々な改善取組を行い、メニュー価格維持という方針で行ってまいりました。今後も、ソーシングやサプライチェーンの改善などの改善取組は継続して行ってまいりますが、商品の品質を維持し安定して提供していくためのメニュー価格改定は状況に応じて行う方針としてまいります。」(2026年8月期 決算短信)

改定の時期や対象は書かれていません。これらの手がどれだけ効果を上げるかは、まだ数字では分かりません。

NouManの読み解き

目を引くのは、会社が原価の動きを「為替」「食材の単価」「物流」「料理の組み合わせ」と分けて示し、組織・工場・メニュー・価格と、手を入れる先をいくつも挙げていることです。調達から加工・配送までの工程を自分たちの側に持っていることで、外の条件が変わったときに、どこを見直すかを選べる、と読めます。ドリアの値下げのあとに工場を整えた話や、最初の工場のトラブルから課題をあぶり出したという振り返りと、同じ向きの動きに見えます。ただ、手を打てることと、それで原価の上昇を吸収できることは別で、会社自身も、品質を保って出し続けるための価格の改定を選択肢に入れています。

自分の経営に置き換えるなら、「原価が上がった」をひとまとめにせず、何が、どれだけ動いたのかを分けて見る。そのうえで、自分の手の届く工程がどこかを確かめる。サイゼリヤの資料の示し方は、そのための一つの見本として読めます。

6.農家から見ると:自分の野菜が、一皿につながるまで

ここからは、NouManの読み解きです。サイゼリヤが特定の作物・規格・産地を求めている、あるいは仕入れ先を募集しているという意味ではありません。ここまでの事実を、野菜を育てて売る側から見直してみます。

NouManの読み解き

  • 一皿から逆算する買い手がいる。 ドリアのように、何年も同じ料理を出す買い手は、店の販売から数か月〜数年先の量を見込み、それを産地と工場の計画に落とし込もうとします。自分の野菜は、取引先のどんな料理や商品に、どれくらいの期間、どれくらいの量使われているでしょうか。それが見えると、自分の作物の役割の見え方も変わるかもしれません
  • 見た目以外の価値。 サイゼリヤは、規格の段階で「サイズや見た目ではなく鮮度を重視」したと説明しています。毎日同じ料理に使う買い手にとっては、鮮度や、量と規格が年間を通してそろうことが、大きさや形の見栄えに加えて意味を持ちうる、と読めます。自分の作物のそうした価値は、いまの取引先にどう受け止められているでしょうか
  • 量と時期を前もって決める関係。 会社の説明では、決めた量を計画どおりに生産してもらい、収穫した全量を買い上げることで、生産者は安定収入が見込めるとされています。その裏側には、季節や天候に左右される畑で、約束した量を約束した時期にそろえるという仕事があります。自分の畑に置き換えると、どこが難しく、どこなら応えられそうでしょうか
  • 「売れているのがおいしい」を、畑に置き換えると。 作り手が「いい野菜だ」と思うことと、相手の料理の中で何年も選ばれ続けることは、同じとは限りません。正垣氏が戒めた「思い込み」は、自分の仕事のどこにあるでしょうか

一皿300円のドリアの裏には、まかないから生まれた料理を、値下げのあとも出し続けるための工場があり、店の人が変わっても同じ味になるよう手間を移す工夫があり、そのさらに手前に、レタスの苗と、契約農家との量と規格の約束があります。会社の公開資料からは、毎日同じ一皿を出し続けることが、こうした工夫の積み重ねの上にあることが読み取れます。自分の野菜が、だれかの毎日の一皿にどうつながっているのか。それを知ることは、自分の作物の価値を考え直す手がかりになると、NouManは考えます。

補足

この記事は、2026年10月21日時点の公開資料をもとにしています。最新情報は、同社の公式サイト等でご確認ください。

出典

  • 有価証券報告書 第53期(2025年8月期)(沿革 p.4〜5、事業の内容 p.7、対処すべき課題 p.11、主要な設備 p.20〜21) 株式会社サイゼリヤ、2025年11月25日 公式IR(PDF)
  • 2026年8月期 決算短信(p.2 経営成績・今後の見通し、p.17〜18 セグメント情報) 株式会社サイゼリヤ、2026年10月14日 公式IR(PDF)
  • 2026年8月期 決算説明会資料(p.5 単体業績、p.20 客数客単価-国内、p.23 営業利益増減) 株式会社サイゼリヤ、2026年10月14日 公式IR(PDF)
  • 2025年8月期 決算説明会資料(p.22 営業利益増減) 株式会社サイゼリヤ、2025年10月15日 公式IR(PDF)
  • 公式サイト「自社工場の取り組み」「ミラノ風ドリア」「サラダ」、人気メニュー「ミラノ風ドリア」、SDGs「原材料の安定調達」、主要食材原産地一覧(2026-10-21 に確認) 株式会社サイゼリヤ、2026年10月21日 公式サイト「自社工場の取り組み」
  • 新卒採用サイト「サイゼリヤの歩み」「バーティカルマーチャンダイジング」「フードサービス業・農業を産業化」(2026-10-21 に確認、掲載日の表示なし) 株式会社サイゼリヤ、2026年10月21日 採用サイト「バーティカルマーチャンダイジング」
  • はじめに:『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(正垣泰彦。単行本は日経BP、2011年) 日経BOOKプラス(日経BP)、2024年10月22日 日経BOOKプラス

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