モスバーガーの一個は、店でどう組み立てられているのか丸のまま届く野菜と、注文を受けてからつくる仕組み
公開 2026年10月25日

この記事は「モスバーガーの一個をたどる」の前編です(全2回)。
野菜は丸のまま店に届き、店の人が手で仕込む。モスバーガーの一個が店でどう組み立てられているのかを、創業から続く方式と2026年の価格改定まで、会社の公開資料からたどる前編です。
モスバーガーの公式サイトには、「モスバーガーの作り方」が13の手順で紹介されています。その1番目は「トマトを輪切りにする」です。一つのハンバーガーが、野菜を切るところから始まります。
前編では、店の作業台で何が起きているのかを見ます。野菜はどんな姿で店に届き、だれが、いつ仕込むのか。会社の公開資料からたどると、創業のころから続く「注文を受けてからつくる」方式と、その手間を残したまま費用の上昇に向き合う姿が見えてきます。
先にまとめると
- 生野菜は丸のまま店に届き、店で手洗いして仕込む
- 注文を受けてからつくる方式を、創業から続けている
- 2026年7月に価格を改定。費用の上昇が長引くなか、品質を保つため
(いずれも会社の説明から)
この記事での書き分け
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 公表されていること | 有価証券報告書・統合報告・発表資料の数字や記載、公式サイトの説明 |
| 会社の説明 | 会社が公式サイトや資料で述べている考え・由来・目的 |
| 生産者の言葉 | 会社の産地のレポートに載った、生産者の発言(主に後編) |
| NouManの読み解き | それらを組み合わせたNouManの解釈。枠の中や「〜と読めます」で示します |
1.2.8坪の店から――「注文を受けてからつくる」
モスバーガーの始まりは、1972年3月12日、東京・成増に開いた2.8坪の実験店です。同じ年の6月に、1号店の「成増店」が開店しました(冒頭の写真)。
公式サイトの「モスバーガーのひみつ」には、創業のころの話が紹介されています。パティづくりを持ちかけた食品会社が、どこも「ハンバーガーって、何ですか?」と答えたそうです。ミートソースは試作を重ねた末に鶏ガラと豚骨のスープにたどりつき、モスバーガーが誕生するまでには試作から約180日かかった、と書かれています。
翌1973年5月には、テリヤキバーガーが発売されました。会社はテリヤキソースについて、「1972年の創業時からの『日本人の味覚に合う、和風味のハンバーガーを作りたい』という想いから開発されたもの」で、「日本古来の食材である醤油と味噌(赤味噌、白味噌)を使用しています」と説明しています。
そして、注文を受けてからつくる「アフターオーダー方式」を、会社は「創業以来守り続ける」ものとしています。統合報告では、この方式を「採用し、できたてのおいしさをお届けしています」と説明し、店内での生野菜の仕込みとあわせて「効率よりも品質を優先するこの姿勢」と位置づけています。創業時にこの方式を選んだ経緯を書いた資料は、今回調べた範囲では見つかりませんでした。
会社の経営方針のページには、創業者・櫻田慧氏の言葉として、「どうせ仕事をするなら、感謝される仕事をしよう。」が掲げられています。
公表されていること
- 1972年3月 東京・成増に実験店(2.8坪)
- 1972年6月 1号店「成増店」
- 1973年5月 テリヤキバーガー発売
- 1980年9月 加盟店の会「モスバーガー共栄会」発足
- 1982年1月 店のレベルを上げるための「HDC(Hospitality, Delicious, Cleanliness)運動」開始
(会社の沿革から)
2.店で、丸のまま仕込む――一個をつくる手順
公式サイトは、モスバーガーを「モスの中でも、いちばん手のかかるモスバーガー。手順が多い上に、技術とスピードが要求されるので、簡単には作れません。」と紹介しています。13の手順を見ると、1番目の「トマトを輪切りにする」のあと、ミートソースを温め、パティを焼き、4番目に「バンズの内側だけを焼く。具材の水分を吸収しにくく、食感もよくなる。」と続きます。玉ねぎを「たっぷり」のせ、ミートソースをかけ、10番目で「トマトを慎重にのせる」。

気になるのは、店の作業台に野菜がどんな姿で届いているかです。
会社の発表資料には、「毎日店舗にまるごと納品される生野菜」とあります。別の発表では、店のスタッフが産地で収穫した野菜を店で使う催しを、「丸のまま納品された生野菜をお店で仕込みをしている」モスバーガーならではの取り組みだと説明しています。統合報告「MOS REPORT 2026」では、「店内で生野菜を手洗いして仕込む工程や、ご注文を受けてからつくるアフターオーダー方式を全国で標準化しています」と説明しています。
同じ統合報告で、会社はデジタル化を進める仕事と、人が担う仕事を分けて示し、「生野菜の仕込み」を「人が担う領域」に置いています。「トマトやレタスなどの生野菜の仕込みといった、おいしさの根幹に関わる手作業は守る必要があ(る)」という説明です。
野菜は、通いコンテナで店に届きます。会社は「大量の資源ごみの削減および品質劣化を防止するため」と説明しています。
店に届いた野菜には、どこの、だれのものかの情報がついています。公式サイトによると、モスに出荷する農家は「産地台帳」を必ず提出し、モスがそれを確認して社内のシステムに登録します。店では、その登録に沿って「毎日届く野菜の産地を確認し、その産地や農家さんの名前をお客さまにお伝えします」。店内には、主な産地と生産者を掲示しています。
モスの生野菜が、畑から一個のハンバーガーになるまで(会社の説明から)
対象: モスバーガーの店で使う生野菜、公式サイト(2026年10月22日確認)、MOS REPORT 2026、2012年の発表資料/いずれも会社の説明。矢印は流れを示すための並べ方で、店の作業の手順書ではありません
出典: モスフードサービス 公式サイト「モスの生野菜」「食材がお店に届くまで(生野菜)」、MOS REPORT 2026(冊子19〜20頁)、発表資料(2012年8月29日、2024年9月26日)
NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方
野菜が丸のまま届くことは、店に仕込みの手間を残します。一方で、店の人が毎日その野菜を手に取り、どこから来たものかを確かめてお客さんに伝える、という流れの起点にもなっています。産地の表示は、店頭の文言だけで成り立っているのではなく、農家の台帳→会社の確認と登録→店の毎日の確認という作業の連なりで支えられている、と読めます。
3.手間を残したまま――価格の幅と、2026年の価格改定
会社は、インフレによる節約志向や特別な日の高価格志向、共働き世帯の増加といった外部環境に対応するためとして、「価格のグラデーション化戦略」を進めています。レギュラー、プレミアム、超プレミアムのように価格帯に幅を持たせ、「お客様に『選ぶ楽しさ』を提供しています」と説明しています。
2026年7月15日には、全国の店(一部の店を除く)で価格を改定しました。モスバーガーは470円から500円に、テリヤキバーガーは470円から490円になりました(いずれも税込)。
2026年7月15日の価格改定(主な商品、税込)
対象: 全国のモスバーガーの店(一部の店を除く)、2026年7月15日改定/単位: 円(税込)/いずれも公表値
出典: モスフードサービス「モスバーガー店舗 商品価格改定のお知らせ」(2026年7月6日)
フレンチフライポテトと炭酸ドリンクのLサイズ、スープ類などは据え置きです。理由は、「各種原材料費や人件費、エネルギーコスト等の上昇が長期化しております。今後も商品の品質を保ち、お客様へ安定して商品をお届けするため」と説明されています。
2026年3月期の営業利益は65億61百万円でした。会社は、価格改定と価格のグラデーション化戦略で客単価が上がり、時間帯別売上の平準化でランチタイム以外の客数も伸びたことで売上が過去最高になり、その増収効果がコスト増加分を吸収したほか、販管費のコントロールを徹底したことで過去最高益になった、と説明しています。
2026年4〜6月期には、連結の原価率が51.5%から54.6%に上がり、営業利益は前年同期の17億円から8億円に減りました。会社は、原材料費の高騰で国内モスバーガー事業の原価率が上がったことを減益の理由の一つに挙げたうえで、「コスト高は織り込み済み、かつ7月に価格改定済みのため、通期計画に変更はなし」としています。
なお、お客さんへの販売価格の改定と、農家からの仕入れの価格との関係を示す資料はありません。
NouManの読み解き事実を踏まえた、Workerプラス編集長の見方
手作業で国産の生野菜を仕込むことと、上がり続ける費用のなかで価格をどう組むかは、同時に抱えている課題だと読めます。価格の幅を広げることは、手間のかかる商品を残しながら、お客さんの選び方を増やす方法の一つと読めます。ただ、どれがどれだけ業績に効いたかの内訳は、資料からは分かりません。
前編の終わりに
店の作業台から見ると、モスバーガーの一個は、丸のまま届いた野菜を店の人が手で仕込むところから始まり、その野菜の産地の名前をお客さんに伝えるところまでが、一つの流れになっています。
では、その野菜は、どんな基準で、どの畑から来ているのでしょうか。後編では、レタスの「7分結球」やトマトの「L玉」という基準の生まれ方、季節で移る産地とモスファーム、店の人が畑を訪ねる催しをたどります。
補足
この記事は、2026年10月22日時点の公開資料(価格改定と業績は、2026年10月25日に確認した決算説明資料を含む)をもとにしています。最新情報は、同社の公式サイト等でご確認ください。
出典
- MOS REPORT 2026(統合報告) 公式IR(PDF)
- 有価証券報告書 第54期(2026年3月期) EDINET(PDF)
- 2026年3月期 決算説明資料(p.6) 公式IR(PDF)
- 2027年3月期 第1四半期 決算説明資料(p.3・p.5・p.6) 公式IR(PDF)
- モスバーガーのひみつ(公式サイト) 資料を開く
- モスの生野菜(公式サイト) 資料を開く
- 食材がお店に届くまで(生野菜)(公式サイト) 資料を開く
- 「モスの生野菜」店頭販売を本格的に開始 発表(PDF)
- 「モスの産直野菜フェスタ」延べ50開催へ 発表(PDF)
- 静岡、長野のモスファームで温室効果ガス排出量の削減貢献率20%を達成 発表(PDF)
- モスバーガー店舗 商品価格改定のお知らせ 発表(PDF)
- 「とろったまチーズ テリヤキバーガー」新発売 発表(PDF)
- 経営方針(企業サイト) 資料を開く
- 沿革 1972年〜1989年(企業サイト) 資料を開く







